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たかしげエッセー ②壊れた心臓で八十路を下る

たかしげエッセー 続編です。
カムバックハート

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②壊れた心臓で八十路を下る

悠々の暮らし忍び寄る病魔

70才まで勤めさせてもらい退職後、趣味の生活で悠々と暮らしていた。術後のフォローを横浜市大付属病院の准教授に託されて10年来診ていただいていた。
「前回大動脈弁を置換した時に僧帽弁も狭窄が進んでいる、経年で石灰化が進んでいるから手術を考える時期だな!」と言われ、「QOLを維持するためにも置換手術をした方が良い、年齢的にも決して遅くはない」と僧帽弁置換手術を強く勧められた。

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たかしげエッセー ①壊れた心臓で八十路を下る

たかしげさんから新たなエッセーが届きました。2度の心臓手術のご経験を詳細に語られています。手術のことだけではなく、職場や生活面での記述も多く、なにか懐かしさを感じさせる、そんなたかしげさんの貴重な文章です。
今回は前編です。後篇もお楽しみに。

カムバックハート

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①壊れた心臓で八十路を下る
 
心臓の異常を知らぬが仏
             
東北新幹線や上越新幹線が開通し高度成長に陰りが見え始めた頃だった。戦後復興に電力需要が逼迫(ひっぱく)していて、火力発電所を製造、建設する重工業社でプラント設計屋として勤めていた。まだ成長期の仕事量は受注され、デスクワークは勿論のこと出張打ち合わせと連日忙殺されていた。毎夜深残業、休日出勤は連チャンだった。「納期厳守・コストミニマム・設計時間短縮・品質保証・・・こんなフレーズの熟語を洪水のごとく聞きながら神経をすり減らしていた。仲間同士で呑んだ時には「もっと楽な仕事に移りてえーな!」と、こぼしていた。
それでも、40才の後半になっても、昼休みはいろいろなスポーツを愉しみ、バトミントンに熱中して汗まみれで愉しんでいたその時、スマッシュを打った瞬間その場にヘタヘタと崩れるようにしゃがみ込み脱力感で動けなくなった。
予期しない出来事だ。

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ayaさんの心臓手術体験記録

昨年6月の集まりではじめてお会いし、昨年末に僧帽弁の手術を受けられたayaさんから無事に手術を終えられたと連絡をもらいました。折角の貴重な体験をこのブログでご紹介して下さいとお願いしたら早速体験記を書いて下さったので掲載させていただきます。特に、術前の若い方々にとって大変参考になるのではないでしょうか。

カムバックハート

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ayaさんの心臓手術体験記録:

<病気概要>

病名:僧帽弁閉鎖不全症(手術時逆流度合:4段階中の3.5)
手術内容:僧帽弁形成術、三尖弁輪縫縮術
手術日:2013年12月26日(当時31歳)
入院先:大崎病院 東京ハートセンター
執刀医:南淵 明宏 先生

<参考になった図書>
弁膜症に関して:
『完全図解 よくわかる心臓弁膜症』
加瀬川 均/著(2011年4月12日 第一刷発行)
(内容紹介)私にとっての教科書的存在。

減塩食に関して①:
『塩分一日6gの健康献立―減塩するならこの一冊』 女子栄養大学栄養クリニック/監修(2013年2月20日 初版第一刷発行)
(内容紹介)料理をする人向けには素晴らしい1冊。

減塩食に関して②:
『塩分早わかり』―FOOD&COOKING DATA 牧野 直子/監修・データ作成 女子栄養大学出版部/編(2013年10月1日 第三版第一刷発行)
(内容紹介)料理をしない人にもオススメの1冊。身近な食品の塩分量が視覚的に示されているので、これって食べても大丈夫かな?と思う時にあると便利。

<体験談>

私が心臓病にかかっていると知ったのは、18歳の時、大学入学直後の健康診断がきっかけでした。それまでも、小学校低学年より心雑音を指摘されていましたが、いつも心電図まで取って問題なしとの診断が下されていました。また、家族にも心臓の動き方がおかしいと訴えましたが「そんなの誰にでもある」と相手にされませんでした。その時の聴診で、初めて精密検査を勧められ、某大学病院への紹介状を手渡されました。

病気発見のきっかけを与えて頂いた先生には大変感謝しておりますが、紹介先の病院で医師から言われた言葉に人間的不信感を抱き、色々調べた上で黙ってかかりつけ医を変えました。

それから、10年以上、内科の先生に経過観察をして頂きました。

不安を抱えながら過ごすには大変長い時間でしたが、手術のタイミングは決めていました。それは、ぎりぎりまでしないということでした。(*1) 僧帽弁には形成術という素晴らしい治療法がありますが、全ての症例に適応できる訳ではありません。

実際に開いてみて置換になることもあるようです。それに、一般的には死のリスクを伴った大手術です。

先延ばしにすることは、同じ手術を受けるにしてもリスクが増すことだとわかっていましたが、 かかりつけ医がデッドラインと判断するまでは、普通にいつも通り過ごしていたいと考えました。(*2)

それには大きく3つの理由がありました。

まず、私は未婚でしたので、出産の可能性を断たれて明るく生きて行く自信はありませんでした。置換になった場合、妊娠・出産の可能な生体弁を選択する方法もありますが、自分の年齢では耐用年数が短いことも知っていたので、何度も開胸手術をする勇気はありませんでした。(同時に、障害者になることも考えられませんでした。)それから、非常に女性的で稚拙な考えではありますが、体に大きな傷ができることも嫌でした。さらに、これといった命の危険を感じるような自覚症状もなかったのです。あったのかもしれませんが、普通の人と比べようもないので、これから治っていく過程で気付くものではないかと思っています。

さて、病状からして一生涯のうちに、手術を回避することはできないと覚悟していたので、そろそろだなと思った2013年6月に、カムバックハートさんの主催する患者さんの集まりに参加させて頂くことにしました。

家族より、友人より、同じ病気を持っている人に聞くのが一番早いと思ったからです。そこで東京ハートセンターの南淵先生と深津さんにお会いすることとなり、何とも思いがけないことではありましたが、その流れで半年後には手術と入院生活をお世話になりました。色々と戸惑いもありましたが、結果、とても良いスタッフさん&チームワークの下で安心して治療を受けることができました。

私は、生死に関わる病気を持っていると知ってからは、泣いたり、悩んだり、誰にも相談できない(わかってもらえない)不安とともに生きてきました。人生において二者択一の選択を迫られるような時には、死ぬ間際のことを想像し、どちらがより後悔しないかを基準に選んできました。極端な話ではありますが、同じような病気を持っている方ならきっと、生への感覚が研ぎすまされていて、死とは表裏一体なのだと強く感じ取れることをご理解頂けるのではないでしょうか。

今は、書籍以外にもネットを駆使して情報を集めようと思えばたくさん手に入れることができます。ですが、未婚の女性が手術を受ける恐怖や、治療方法をどのように選択したかが綴られたものを見つけることはできませんでした。それだけ同世代の患者さんが少ないのだろうとも思いましたが、一方でそれは、私にとって気持ちを分かち合える人がいない寂しさや孤独さ、不安に繋がっていました。もし今後、同じような悩みを持つ方がいらっしゃった場合に、何かしら参考にして頂けることがあればと思い、この文章を投稿させて頂きました。

(*1)
全ての症例でうまくいくとは限りませんので、これからの方はメリット・デメリットのバランスを熟慮下さい。

(*2)
術後のぼーっとした頭で、手術を先延ばしにするというのは、執刀医泣かせの利己的なずるい考えだったなと我ながら思いました。先生方にご迷惑をおかけしたなと終わってから思いましたが、そんな悪条件の患者でも、手を尽くして下さり無事に戻ってくることができました。心臓病仲間の方々、病院スタッフの方々、全ての巡りあいに心より感謝申し上げます。

2014年1月31日

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マダムアリスのつぶやき その1

「マダムアリスのつぶやき」投稿が届きましたので、第一弾を掲載させて頂きます。

先天性心疾患から始まり、過去に3回も心臓手術を受けられたマダムアリスさん。長年の心臓病の経験から得られた知識、心情、知恵、勇気と友情はこのブログを読まれている皆様の参考になることと思います。(カムバックハート)

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暑すぎる~(>_<)
この夏をどう乗り切るか…。
『予定は未定で決定にあらず』
保育ママの職場復帰目指し、リハビリに頑張った昨年の夏。
9月の復帰後、色々悩み…現在は休職中。

諦める事、我慢やセーブする事を何度経験したかな…。

病歴が長いと、生きる為に、選択肢が無い事項には、自分で受け入れるまでの時間の葛藤と、慣れるまでの努力が必要…。
後は必ず、自分で選択して、なるべく早めに結論を出す事。
結果が悪くも、良くも自分の責任だから。
自分が立ち直る為の私の決め事…。

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たかしげさんからの投稿 「小さな折り鶴」

たかしげさんの心臓手術の入院中とその後の出来事を綴った文章を頂きました。心臓手術という一大イベントを経験するにあたっては、この文章に書かれているような、ふっと流れて忘れてしまいそうな出来事にも敏感に感じることができるようになるのでしょう。その結果、そうしたことが患者や家族の大切な記憶となって心に残るのかもしれません。

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(撮影;たかしげさん)

再度の心臓手術を宣告され話す言葉は力なく,荒く吐く息で家内に付き添われて病院のベッドにやっと身体を横たえた。隣のベッドには初老の男性が横になっていて挨拶したが病人特有のひげが伸びているので歳は分からない。力なく応えてくれた。 

患者さんは東さんと云う方だった。日曜日になるとお孫さん達を連れてご家族がお見舞いに来られ賑やかだった。微笑ましい雰囲気に不安で落ち着かない心が癒された。

帰り際に小学4年くらいの女の子が見知らないお爺さん(私)に仰ぎ見るようにしてかわいい手の掌に小さな空色の折り鶴をのせて「オジさんこれ、早く好くなってください」とプレゼントしてくれた。うちの孫は高校生だ。優しい言葉はかけてくれるがこの雰囲気にはなじめない齢(とし)となっている。

帰りに東さんの奥さんが挨拶された。病床にある主人は癌を患っていて余命わずかと告げられているらしい。折り鶴のお礼を云って別れた。

13時間余の手術が終わり成功してICUから部屋を替えて個室に戻った。
折り鶴はどこ?と娘に聞いた。ポンプヘッド後遺症も無く折り鶴を覚えていたのだ。
娘は小指の先のような折り鶴を抽斗(ひきだし)からだして見せてくれた。 
あの子からのプレゼントの折り鶴が手術成功を運んできてくれたのかもしれない。一瞬胸にこみ上げてきた。喜怒哀楽の情が失せ始めた爺には珍しい感動だった。

順調に回復している頃、東さん家族とお会いした。
「退院おめでとうございます」とお祝いを述べた途端「最後は家で家族に囲まれて終わらせたいから・・・65才です」と 奥さんの口から洩れるように聞こえた。折り鶴のお礼もして後ろ姿を見送った。

病院内の患者間のひと時の交流と受け止めて一年が過ぎ去った。

ぺ―スメーカでバージョンアップした心臓を抱えながらも暑さの猛威にもへこたれることなく過していた。突然チャイムとともに映った見知らぬ女性に「あずまです」の言葉に一気に入院生活の記憶が甦って来た。手には見たことがある“配食時付いてくる注意書きの紙片が握られていた。互いに交換したアドレスメモを思い出した。遠く金沢区から訪ねてくれたのだ。私の健康を喜んでいただいたが反面、ご退院後間もなくかわいい鶴を折ってくれたお孫さんたちが涙ながらに手を握り黄泉のくにへ旅立たれたと話された。

癌の執拗な脅威に比べ多くの人工物を埋め込まれても健常者並みに暮らせる有難さに感謝している。

    「たかしげ」      2012-9-24
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プロフィール

Author: カムバックハート

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カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の49歳男性。

2008年12月に心臓の僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)


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但し、私は医者やカウンセラーではないので医学的なご質問にはお答えできません。初めて連絡下さる方は簡単なプロフィールをお願い致します。

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ブログのSSL化(セキュリティ対策)、カテゴリの編集、過去全記事の一覧表示、メールフォームの追加を行いました。お気づきの点がございましたらお知らせ頂ければ幸いです。(2018.8.17)

このブログは、私が心臓弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。手術を受けた時の描写は2008年12月の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

コルコバード


南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。
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